追記した

ピーター・シンガーのレポートの要約を一応アップした(参照)。ただ、思ったより長かったのと、読みながらだらだらメモしたものを並べ替えて、ちょっと手を加えただけなので、まとまりは悪い。書き直そうと思ったが、気力がでなかった。
PMFについては前に訳したシンガーのOp-Edも参照。このときから状況が全く変わってないのがすごいな。ともあれ今回のブラックウォーターの件でPMFをめぐる状況に根本的な変化が起きるとは自分には思えない。

"Can't Win with Them, Can't Go to War without Them"

このあいだのブラックウォーターの事件に関して、『戦争請負会社』著者のピーター・ウォレン・シンガーのレポート。サマリーから一部引用すると──


The use of private military contractors appears to have harmed, rather than helped the counterinsurgency efforts of the U.S. mission in Iraq. Even worse, it has created a dependency syndrome on the private marketplace that not merely creates critical vulnerabilities, but shows all the signs of the last downward spirals of an addiction. If we judge by what has happened in Iraq, when it comes to private military contractors and counterinsurgency, the U.S. has locked itself into a vicious cycle. It can’t win with them, but can’t go to war without them.
前者*1は前からたびたび言われている話だが、後ろのほうは理路がよくわからない。あとで読んで追記する。
しかしシンガー先生は偉いな。

Over the last years, I have received multiple offers to profit by joining firm boards or to consult for investors interested in the industry. I declined all of these in order to maintain my independence. In turn, I have also received two death threats, three assault threats, and two threats of lawsuits from companies.
当然ながらシンガーにはPMFの役員や顧問にならないかと申し出があったが、彼は断っているとのこと。また、脅迫や訴訟の脅しなども受けているそうだ。

*1:契約単位のPMFの活動がイラクにおける米軍全体のcounterinsurgencyの目標と相反すること。

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マット・タイッビ「9/11陰謀論の望みゼロのバカさ加減」

けっこう前に翻訳は終わっていたが、「9/11陰謀(自作自演)論なんてもう下火だろし、趣味がいいとは言えない内容なのでしまっておこう」と考えていた。しかし、kikulog - 11th of Septemberでもこの記事について何度か触れられており、出すこともそれなりに意味がありそうなのでアップする。上で書いたようにけっこうどぎつい内容なので、9/11をこうしたネタにされると不快な人は見ないほうがいいかもしれない。
タイッビの理屈は陰謀論の原理的な否定ではない(それは不可能だ)が、普通の人間にとってはこれで十分のはずだ。他方で「科学的」検証の方向だってあるが、素人はもちろんのこと、物理学者らにとっても片手間で扱えるような内容ではない。陰謀論者はこの点を理解していないように思う。
また、言うまでもないが、9/11調査報告書やNIST、FEMAの報告書を批判することは陰謀論の肯定を意味しない。陰謀論系のサイトはわざとなのか、区別できないのか、この点を混同している*1
マット・タイッビについてはこのエントリを参照。前に別の記事を訳した。

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イスラエル・ロビー本、続報

このエントリの続き。
イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1』を本屋で見てきたが、副島本人が訳しているわけではないようだ。そのあたりの事情は本人のページ魚拓)に書いてある。あの独特すぎる文体でめちゃくちゃにされると思っていたので、ちょっと拍子抜けして、買わずに帰ってきてしまった。原著はもう手に入れたし、買わないかもしれない。
訳もぱっと見たところまずくなさそうだった。ただ、上のページで引用されているところだけで間違いが2つあった*1ので、ちゃんと比較すると問題がみつかるかもしれない。
副島の“解説”も長いのは10月発売の2巻目に載るらしく、第1巻にはミアシャイマーとウォルトの簡単な経歴しか書いてなかった。最後のネオアイソレーショニストとか真の愛国者云々を除けば、まあ、それほどひどくはなかった。
ともかく、ミアシャイマー先生にメール送るつもりで副島のこと調べてたら、あまりにすごすぎて具合悪くなってしまった。副島の立場がよくわからないんだが──

  1. 人類は月に行っていない
  2. 9/11はアメリカ政府の陰謀
  3. ホロコーストは無かった(ガス室はなかった?)

これは全部イエスということでいいのか? 一番最後の項目については、だいぶ前にフィンケルシュタインの『ホロコースト産業』で検索したとき、副島が書いた強烈にひどい文章を読んだ記憶があるが、あまりのことに記憶から消えてしまった(今は会員しか読めなくなっているので確かめられない)。
まあもうざっと略歴を書いて、著書のタイトルを英訳して送るだけで十分かな。

原著のほうは半分ぐらい読んだ。第三章、イスラエルのニュー・ヒストリアンたちを援用してのイスラエル批判は、かなりよくまとまっていて便利。

*1:「その年の夏の終わり、『フォーリン・ポリシー』誌のある書評家は……」の『フォーリン・ポリシー』は、正しくは『フォーリン・アフェアーズ』。2つ目は「次のように予言した評論家もいる。『かの筆者たちは、自分たちの考えが、不明瞭なものであることにすぐに気づくことになるだろう』と」の部分。原文は"A few critics even predicted that the article (and its authors) would soon fade into what they thought would be a richly deserved obscurity"。このobscurityは「不明瞭」ではなく「無名」だろう。正直この英文自体を理解しているか怪しい。

ソ連ポスターブログ

Gomadintime2007-09-20

ソ連のポスターを一日一枚ずつ紹介していくブログ。ポスターだけでなく、作者や背景についても解説してくれる。各エントリのタイトルが秀逸。
作者は同じ形式でキューバのポスターのブログも作成している。

ミアシャイマー、ウォルトのイスラエル・ロビー本が出版

このブログでも何度かとりあげたことのあるミアシャイマーとウォルトのイスラエル・ロビーについての論文が、内容を膨らませて本になった。タイトルは"The Israel Lobby and U.S. Foreign Policy" ISBN:0374177724
ちょうどいい、だいたいニュースは追ってきたし、簡単に論文*1やその後の論争*2について触れておくか、でも内容が内容だし、いろいろcaveat(断り書き)をつけるのが面倒くさいよな、そもそもあまり健康的な議論にならないし*3……とか考えていたら、日本語訳がほぼ同時出版されることを知る。それで、訳者を見てみると……
副島隆彦! オワタ\(^o^)/
しかし、本当に冗談じゃすまされないなあ。ミアシャイマーとウォルトは訳者がどういう人間かわかってないんだろう(と思いたい)。2人にとって、こういう陰謀論者と関連付けられるのは最も避けるべきことのはずだ。メールするか。だが、副島隆彦のカラフルな活動をどう説明すればいいのやら……
まあ日本語版を手に入れて、間違いなく付くであろう副島の“解説”を読んでからだな。単にそれを部分訳して送ればすむ可能性が大だし。

*1:反ユダヤ主義だとはもちろん思わないし、批判派の反応は異常だと思うが、ロビーという語の定義が粗雑(AIPACなどの普通の意味でのロビーだけではなく、シンクタンクや親ユダヤ的な個人も含まれる)で、陰謀論と批判されてもしかたない面はある。イラク戦争に関するロビーの役割については十分説得的とは言えない。

*2:Foreign Policyでの論争や、ここで触れた討論会がネットでみれるようになったとか。トニー・ジャット先生も論争の余波を受けていろいろ大変なことになってるとか、論文に関してはNew York Review of Booksのマイケル・マッシングのエッセイがすばらしかったとか。

*3:イスラエル・ロビー”や、“フィンケルシュタイン『ホロコースト産業』”で検索すると意味が分かる。「中共ユダヤプロパガンダ手法を学んでいた!」みたいな話がいっぱい聞ける。こういう残念なレベルの言説ばかりを目にすると、論文批判側の危惧も正しいと思えてしまう。

8月も終わりだ!

一ヶ月以上更新しなかったか。
「ティモシー・ガートン・アッシュが『善き人のためのソナタ』を批評してて、あまりにぴったりで爆笑」「イグナティエフのmea culpaみたいなエッセイが意味不明瞭すぎて失望」「ブッシュのいろいろな意味で歴史に残る演説が2連発」「ラウル・ヒルバーグが死去」とか、書くことはあってもエントリを書く労力と需要が見合わない気がして、いつも見送ってしまう。まあネットで日本語のページをほとんど読まなくなったのも原因か。
なんかやる気の出るような新しい方向を考えないとな。読書記録をつけるとかそういう方向か。