"Waltz with Bashir"

友だちに話したら知らないと言われたのでちょっと書いておく。

"Waltz with Bashir"はイスラエルの監督アリ・フォルマンによるレバノン侵攻を扱ったアニメ・ドキュメンタリー。このあいだのカンヌに出品され、下馬評はかなり高かったが、残念ながら賞は受賞できなかった。

1982年6月、イスラエル国防軍レバノンに侵攻。南レバノンにあるPLOの軍事拠点を破壊し、イスラエル北部への砲撃を不可能にするのが当初の作戦の目的だった。だが、当時の国防相アリエル・シャロンを中心とした作戦の主導者らの目論見通り、戦線は拡大。イスラエル軍ベイルートへ到達すると、PLOの指導部が置かれていた西ベイルートを包囲、爆撃し、PLOの軍事・政治部門はレバノンから追放された。
ついでイスラエルは、同盟関係にあるマロン派キリスト教徒をレバノンの権力の座に就けようと工作。結果、キリスト教政党であるファランヘ党民兵組織(ファランジスト)のリーダーであるバシール・ジェマイエルが順当にレバノン議会で大統領に選出されるが、就任前の9月、暗殺される。
イスラエル国防軍は暗殺前に結んだバシールとの協定に基づき、ただちに西ベイルートを占領すると、パレスチナ人難民キャンプ、サブラ・シャティーラの「テロリスト」掃討をファランジストに委任する。ファランジストは当然予想されたとおり暗殺の報復に出て、女子どもを含む民間人1000人近くが殺害された。いわゆるサブラ・シャティーラの虐殺である。
虐殺のニュースが伝わると、イスラエル国内で歴史的規模の激しい抗議運動が起こり、政府は虐殺について公式の調査委員会を設けた。委員会はイスラエル政府にある程度の責任があることを認め、アリエル・シャロンの辞任を勧告した。シャロンは国防相を罷免されたが、政治的生命を保った。フォルマンが映画の製作をはじめた頃、シャロンは首相になっていた。

レバノン侵攻当時20歳だった監督のフォルマンは、友人の夢についての会話がきっかけで、レバノンへ従軍したときのことをはっきりと覚えていないことに気づく。フォルマンは友人や一緒に従軍した兵士らにインタビューをはじめ、徐々に記憶をつなぎ合わせていく。記憶を再構成する旅は、フォルマンをベイルートへ、そして難民キャンプ近辺に配置された日へ、いやおうなしに導いていく。

アニメとドキュメンタリーとは妙な取り合わせだが、トレイラー(PILの曲が印象的)を見るとなかなかの効果をあげているようにみえる。

映画の公式サイトによると、日本では東京フィルメックスで上映されるとのこと。期待。