ロリー・スチュアート

最近知った人物だがすごすぎる。往時の大英帝国が定期的に産出していた才能あるエキセントリックなオリエンタリストの風情。ただ、外見はそこら辺の兄ちゃんにしか見えない。


 1973年生まれのロリー・スチュアートはスコットランドの作家。香港で生まれ、マレーシアで育てられる。教育はイートン校とオックスフォードのベイリオル学寮で受け、大学では歴史と哲学を研究。

 英陸軍士官(スコットランド高地連隊)としての短い期間を経て、スチュアートは外務省入りした。1997年から1999年インドネシアイギリス大使館で、コソボでの作戦後モンテネグロにイギリス代表使節として、そして2003年から2004年のイラクでアマラ[マイサンの間違い]州の副知事、ナシリヤの上級顧問として務める。2004年以後はハーバード大学のカー人権政策センターの特別研究員。広く旅をしており、イラクアフガニスタンに詳しい。2000-2002年にかけて、スチュアートはパキスタンアフガニスタン、インド、ネパールにまたがる6000マイルの旅程を徒歩で横断している。

 第一作"The Places in Between"(2004)はスチュアートのアフガニスタンでの経験を綴ったもので、批評家に絶賛された。同作は王立文学協会オンダーチェ賞、スコットランド芸術協会賞、スコットランド精神賞を2005年に受賞。ガーディアン・ファースト・ブック・アウォード、ジョン・ルウェリン・リース賞候補にもなった。

 第二作"The Prince of the Marshes: And Other Occupational Hazards of a Year in Iraq"(2006)は、多国籍軍イラク入りしてほどなくスタートしたイラク・マイサン州副知事、ナシリヤ市上級顧問としてのスチュアートの経験を描写し、これらの地域に機能する政府を樹立しようとする奮闘が描かれる。

経歴もすごいが、著書がまた面白そう。2002年1月、アフガニスタン徒歩縦断? タリバン放逐直後で、しかも冬……

 2002年の1月、ロリー・スチュアートはアフガニスタンを徒歩で横断した──機転、ペルシア語方言とムスリムの習慣についての知識、そして土地の人々の親切を頼りに生き延びながら。スチュアートは道すがら英雄と悪漢、部族の長老、ティーンエイジの兵士、タリバン司令官、外国人エイド・ワーカーと出会う。彼はまた思いがけない旅の友も選んだ──引退したマスティフの闘犬で、ムガール帝国アフガニスタン始皇帝に敬意を表してスチュアートはバーブルと名付けた。このムガール皇帝の足跡を犬と人間のペアは追っていく。

 2003年8月、30歳のロリー・スチュアートはタクシーでヨルダンからバグダッドへ向かった。ペルシア語を話せるイギリス人外交官として、スチュアートは人質の解放交渉、選挙実施、そして内戦寸前の数百万の住民にインフラストラクチャーらしきものを継ぎ接ぎしながら、以後11ヶ月を過ごす。"The Prince of the Marches"はスチュアートのこの一年を物語る。
"The Places in Between"はNew York Timesの2006年度10 Best Booksに選ばれている。そのNYTの絶賛書評
本人の公式サイトもある。アブドゥル・ハク*1の写真が何枚かあるが、付き合いがあったのか。よく考えると時系列的にありえない。単なる同姓同名だ。
"The Places in Between"はともかく読もう。

*1:パシュトゥン人の野戦司令官。かなり早くからパキスタン情報部とタリバンについて警鐘を鳴らしていた。タリバン以後のアフガニスタンで貴重な役割を果たせたかもしれないが、アメリカ軍の侵攻直前にタリバンに捕まり、処刑されてしまった。