イラン攻撃はあるか?


The aircraft carrier Eisenhower, accompanied by the guided-missile cruiser USS Anzio, guided-missile destroyer USS Ramage, guided-missile destroyer USS Mason and the fast-attack submarine USS Newport News, is, as I write, making its way to the Straits of Hormuz off Iran. The ships will be in place to strike Iran by the end of the month. It may be a bluff. It may be a feint. It may be a simple show of American power. But I doubt it.
クリス・ヘッジスはちょっとぶちあげすぎのような。この件で宗教的なあれこれがそれほど重要だとは思えない。これでは「イランはアポカリプスを望んでいるのでMAD(相互確証破壊)は通用しない! むしろ喜ぶ! だから8月22日にイスラエルを核攻撃する!」(え、イランはすでに核開発を!?)と言ったバーナード・ルイスに近づいてしまう。*1まあ、アポカリプスと十字軍じゃ大いに違うし、ブッシュ政権イデオロギー的拘束が中東政策失敗の主要な原因だとは自分も考えているが。
でもたしかに、エリオット・エイブラムズの復活と昇進には驚いた。エイブラムズはイラン=コントラ事件で有罪になった男(のちに父ブッシュが赦免)。現在は国家安全保障担当大統領次席補佐官として、2ヶ月前のレバノン戦争ではライスにぴったりくっついて顧問役をしていた。
ともあれ、イランとの戦争があるかについては自分は「ある」に傾いている。あるといっても地上軍派遣はありえないので、イランの核開発施設への空爆になるが。TIMEの記事"What Would War Look Like?"が、この問題についてよく耳にする意見を的確にまとめていると思う。以下は自分なりのごく適当なまとめ。
イランとの戦争が「ない」ばあい、どうなるか考えてみる。イランは核保有国となり、湾岸、中東地域での影響力を増大させ、イスラエルを脅かす。中東一帯におけるアメリカの支配力は弱まる。シーア派の力の増大を恐れたエジプト、サウジなどが核開発へ向かうおそれもある。ワシントンにとって受け入れがたい選択だろう。
衝突が「ある」となると、地上軍派遣は現実的ではないので空爆になる。核関連施設を中心とした1500箇所の空爆でイランの核開発を数年間遅らせることができるかもしれない。楽観的な人間は再度の空爆を恐れるイランが核開発を断念すると主張する。もっと楽観的な人間はこの空爆がイランの体制転換の引き金を引くと考える。同じ理屈はレバノンでも耳にした。
一番ありそうなのが反アメリカでイラン国民が結束し、イラン当局がアメリカに報復を行うという結末だろう。そしてイランにはかなりの選択肢がある。
まずテロ。ヒズボラやそのほかテロリスト組織にイスラエル攻撃やアメリカ攻撃を命じる。
第2に反乱。イラクの親イラン派政党(つまりシーア派の相当部分だが)に資金と武器を提供し、米軍への攻撃を促す。攻撃は現在の数倍に増加し、米軍の安全地帯は大幅に縮小する。兵站への集中攻撃も予想される。一方、東のアフガニスタンにも支援を強化し、すでに繋がりがあるアフガニスタン西部の野戦司令官、あるいはタリバンとも連携するかもしれない。
第3に石油。ホルムズ海峡を機雷なり、陸上からの砲撃なりで途絶、あるいは少なくとも妨害する。くわえてシーア派の同盟者の力を借りた、サウジのパイプライン攻撃などもオプションにある。
こうした展開を考慮すると、当然だが、結局空爆だけというわけにはいかない。地上軍派遣に引きずり込まれる。もちろんこうした誰でも思いつくような点にはブッシュ政権も気付いている。それゆえ、ハードコアなネオコンはイランの体制交代を叫んでいるが(例えばリチャード・パール)、現在は交渉が継続されている。できれば制裁なども用いて、イランに核開発を諦めさせたい。あるいは時間稼ぎして、もっとプラグマティックなリーダーがトップに立てば…… しかし、交渉が上手くいかなかったら? 
最後にアメリカがイランと直接交渉して、イラン不干渉を保証する代わりに核開発を諦めさせるというシナリオも考慮されているが、これはアメリカ、イランの両者が別の政権に変わっても極めて難しいだろう。
まあ「イラン戦争はある」派は「衝突の帰結はアメリカにとって破滅的だがそれでもある」と言うのだから、ストレートな説明では納得し難くなるのは当然だ。今回はブッシュ政権の特異性には触れない議論だったが、そもそも「ある」派の確信の大部分はこの特異性に基づいているわけだし……

*1:前から疑問なんだが、ウォール・ストリート・ジャーナルのOpinion欄にこういうものすごいのが結構な頻度で掲載されるのはなぜなんだろう?