Jack Womack "Going,Going,Gone" ISBN:0802138667

ドライコ6部作の完結編、ついに読了。
本作におけるウォマックの文体上の挑戦は60年代(あるいはそれ以前のビートニク風jiveというべきか)のヒップスターの語り口を再現する点にある。この点については、十分に通暁しているわけではなくウォマックの試みがどの程度成功しているかは判断できない。再読時は"Hippie Dictionary"ISBN:1580085474ろいろ確認したい。だが十分な知識がない者にも、直喩や誇張法、隠語や固有名詞が矢継ぎ早に繰り出される文体は実にクールに感じられた。
内容についてはなにを書いてもネタバレになりそうなのでやめておくが*1、最後まで読めば、もう一度6部作を読みたくなることは確実である。とりあえず『ヒーザーン』と『テラプレーン』を原文比較しながら再読しよう。

*1:あらすじは倉田タカシさんのウォマックサイトの該当ページを参照していただきたい。

 ジョナサン・レセム "The Fortress of Solitude"

翻訳出るのか! しかし誰が訳すんだろう。以下の書評の部分を見ても、膨大な文化的背景知識と言語的センスが必要に思えるが。


the plot manages to encompass pop music from punk rock to rap, avant-garde art, graffiti, drug use, gentrification, the New York prison system-and to sing a vibrant, sometimes heartbreaking ballad of Brooklyn throughout. Lethem seems to have devoured the '70s, '80s and '90s-inhaled them whole-and he reproduces them faithfully on the page, in prose as supple as silk and as bright, explosive and illuminating as fireworks.
しかしめでたい。

 ジャック・ウォマック "Ambient"メモ

祭りに向けて"Going,Going,Gone"を読もうと思っていたが、時間的に無理っぽいので"Ambient"再々読に変更。すべて理解するつもりで読む。
はっきりとしたネタバレはできるだけしませんが、未読の人は読まないほうがいいでしょう。というより未読の人が読んでも意味不明だと思う。

以下は主に言葉のレベルでの疑問点や気づいたことのメモ。ページはGrove Press版。

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 ルーディ・ラッカーのブログ

いつの間にかラッカー先生までブログを書いてた。あと今年の秋にラッカーの人生の集大成的ノンフィクション"The Lifebox, the Seashell, and the Soul"(詳細ページ)が出るとのこと。これは買わないと。

ウォルター・ジョン・ウィリアムズ『必殺の冥路』ISBN:4150109192

といいつつ読了。id:Projectitohさんがここで“「スキズマトリックス+スパイ小説」の『必殺の冥路』”と書いていたが確かにそのとおりというほかない。臆面もないパクリ精神。
例えば、


 ネオ改造主義者はどんなトラブルとも無縁な存在となるよう、自分たちを遺伝子的に進化させようとしている。
 それとは逆に、運命論者はみずからを機械と結合させ、本来の寿命をうんと引き延ばし、自分と自分に理解できないこととのギャップを人工知能に埋めてもらおうともくろんでいる。
……そのまんまじゃねえか。しかも話にほとんど関係ないし。他にも「プリゴジン的散逸」という言葉が出てきたり。
しかしウォルター・ジョン・ウィリアムズは冒険小説としてのツボは外さない男なので、読んでる間は非常に楽しかった。
ところで、サイバーパンク・ブーム後くだらないエピゴーネンが百出したというような物言いを聞くが、日本で訳されているのはウォルター・ジョン・ウィリアムズやエフィンジャー、どちらもかなりよい作家なのでいまいちピンと来ない。ほかにも誰かいたかな? 当然翻訳されていない本でたくさんつまらないのがあるのだろうが。