ルワンダのジェノサイドを扱った映像作品

ホテル・ルワンダ』公開記念というわけでもないけど、ルワンダのジェノサイドを扱った映像作品を見つかるかぎり集めてみた。フランス語の作品もいくつかあたりはつけたけど、よく分からないのでカットした。

フィクション

内容は「『ホテル・ルワンダ』日本公開を求める会」を参照のこと。

物語は2004年の4月と10年前の同じ月、2つの時系列で展開する。
主人公オーギュスタンはルワンダ軍士官だったが、現体制に批判的な穏健派だった。ツチの妻を娶り、3人の子どもがいた。一方、彼の弟オノレはフツ至上主義者で、ラジオRTLMのDJとしてプロパガンダを広め、人気を集めていた。1994年の4月にジェノサイドが始まったとき、オーギュスタンは同僚のザビエルとともに軍の命令を拒否することを決意する。オーギュスタンとザビエルは穏健派の殺害リストに載せられていたので、家族を安全な場所まで連れ出させるため、過激派に顔の利くオノレを説き伏せる。兄弟の絆が勝ち、オノレはしぶしぶ同意、家族を車に乗せ出発する。同じ頃、オーギュスタンの1人娘が預けられていた女学校では、教師のジャンヌがジェノサイドから子どもたちを守り抜く決意をしていた……。
10年後、オーギュスタンのそばに妻と子どもの姿はない。ジャンヌに請われたオーギュスタンは、アルーシャ国際法廷で裁判を待つオノレと面会し、真実を知る決意をする。

HBO製作だからテレビで放送したってことでいいのか? そうとは信じられないほど、剥き出しの虐殺シーンや原始的恐怖を刺激される場面が続く。説明不足のカットも多く、背景知識がないと映像に圧倒されてしまうと思われる。しかし考えを変えれば、『ホテル・ルワンダ』ではあまり焦点が当たらなかったジェノサイドを真っ正面から描いているともいえる。
監督は『ルムンバの叫び』(参照)を撮ったラウル・ペック。なぜかデブラ・ウィンガーが実在の米国官僚*1役で出ている。

これは撮影が開始されたばかり。ジョン・ハートがイギリス人の老神父役で出演。ジェノサイド当時ルワンダにいたBBCの番組プロデューサーが脚本執筆とプロデュースをしている。

未見。日本でも2002年東京アフリカ映画祭で上映された。

ドキュメンタリー

NHKで縮約版が放送された。国連平和維持部隊司令官としてジェノサイドを目の前にしながら、「付託された権限外」だったため為すすべもなく見守ることしかできなかったロメオ・ダレール。彼が10年ぶりにルワンダを訪れるのを機に撮影されたドキュメンタリー。
「『ホテル・ルワンダ』日本公開を求める会」のブログにくわしい感想がある(前編後編)。

上記2つはPBS製作のドキュメンタリー。前者はSamantha Powerの"A Problem from Hell"、後者は『ジェノサイドの丘』をベースにしている。
自分が観たのは前者のみだが、クオリティがおそろしく高かった。ベースになった本の内容から推測できるように、米国のジェノサイドへの無対応を詳述している。オルブライトやアナンらの米国や国連の高官、現地にいたNGO職員、ポール・カガメにまでインタビュー。公式サイトで映像の半分以上は見ることができる。

ルワンダ人の監督Eric Kaberaによるジェノサイドの証言を集めた映像のようだ。Eric Kaberaは『ルワンダ虐殺の100日』にもプロデューサーとして参加している。

*1:アフリカ問題担当国務次官補のプルーデンス・ブッシェル

ルワンダ史第2回

アップした。
ところでwikipediaルワンダ紛争の項目にははっきりした間違いがあるから、訂正しないと。独立のときはすでにフツが支配権を握っていて、1973年のクーデターを起こしたのもフツ。それに、独立後のツチの反政府運動とRPFは直接の関係はない。1世代ぐらい違うし。これ連載が終わってからコピー&ペーストして訂正するか、それとも今すぐ訂正できるところはすぐしたほうがいいかな。
それで、英語のほうの"Rwandan Genocide"。例によってすごい情報量なんだけど、アメリ陰謀論なんだよな。アメリカ>ウガンダ>RPFという流れ。ハビャリマナを殺ったのもRPFだとほぼ断定。確かにハビャリマナの航空機撃墜には色々不審な点が多く、RPFがやった可能性がゼロとは言わないけど、いくらなんでも公平でない書き方。挙げられている論拠も十分反駁可能。例えば──


"Training provided for Kagame and other RPF officers at Fort Leavenworth immediately prior to and during their invasion from Uganda is officially acknowledged."
ってあるけど、別にRPFの人間だけが受けてたわけじゃなくて、ウガンダ軍士官が他にも訓練受けてた(RPFの主要メンバーはウガンダ軍高官)。それに本気でアメリカが手引きしていたなら、なぜカガメがフォートレヴンワースで訓練中にRPFの侵攻が開始されたかに疑問が残る。
逆にフツ強硬派が犯人である論拠として、RTLMやカングラ(フツ強硬派のメディア)がハビャリマナの死を予言していた事実がある(RTLMは日にちまで指定)。また大統領暗殺後数時間(UNHCRの代表の証言では1時間以内)で首都キガリの街路に民兵の検問所が設置されたことも考慮しないといけない。
 こんな感じでいろいろつっこみどころはあるのだが、こういう長いエントリを途中から(しかも英語で)書き直すのってめんどくさいな。そもそも自分がやるべきことじゃない。

 ルワンダ史

ついにはじまっちゃいましたよ。自分としては完璧に納得いったとは言えないことを書いてしまったな。いろいろ不満はあるがしょうがない。植民地時代以降になればずっと確信を持って書けるから我慢だ。
ところでハム族云々の話だが、これはアーリア人インド・ヨーロッパ語族と同じ関係なんだよな。

このへんについて調べたかったが、何読めばいいかわからず。

ルワンダでベルギー人カトリック司祭が拘束、法廷に

フツ至上主義者の新聞『カングラ』の記事を司祭が編集する雑誌に載せ、ジェノサイドを扇動したという告発。本人はレビュー目的だったと否定している。民衆法廷ガチャチャ*1で外国人が裁かれるのは初めて。でも第一カテゴリーに含まれるから、ルワンダ国内の普通の裁判所(か国際法廷)で裁かれるはずだ。
うーん、今ひとつタイミングがわからないな。ついこのあいだ別にルワンダ軍の少将もジェノサイド関連で拘束されてるんだよな(参照)。

*1:ガチャチャについてはこちらを参照

服部正也『ルワンダ中央銀行総裁日記』ISBN:4121002903

本書はIMF招請を受け、日銀から派遣、ルワンダ中央銀行総裁に着任した著者の現地での苦闘を綴った記録である。
まず断っておきたい。以下で触れる箇所はジェノサイド関連の内容に終始するが、本書の主な内容はなによりもまず服部の中央銀行総裁としての活動であり、ルワンダの政治的状況や歴史はごく簡単に触れられるに過ぎない。また、ルワンダ人自身の話に注意深く耳を傾け、ルワンダ国民の発展を目指して政策を決定していく過程には服部の知性と誠実さが滲み出ており、以下の偏った記述はこの本の価値と魅力をほとんど伝えていない。

続きを読む

 『ホテル・ルワンダ』日本ではやらない

オーノーなんてこった。しかもDVD買うか迷ってチェックしてみたらAmazon.co.jpで売ってないし。
しかし最近涙腺がめっきり弱くなった気がするので、映画館で『ホテル・ルワンダ』みたら絶対泣く。見に行けない。今"A Problem from Hell"ISBN:0007172990*1を電車の中で読んでるんだけど、すでに2回ぐらい目を潤ませているしなあ。

*1:"Ghosts of Rwanda"で著者がインタビューされていて知った本。20世紀のジェノサイド(アルメニア人、ナチスカンボジアイラククルド人ルワンダボスニアコソボ)の経過、各ジェノサイドの時点でアメリカが知っていたこと、さらにジェノサイドへの合衆国の対応をまとめている。ピューリツァー賞ノンフィクション部門と全米批評家協会賞を受賞。

Ghosts of Rwanda

柳下毅一郎氏の日記で知った、ルワンダの虐殺を扱ったPBSの番組。日記でふれられているBBCの記者って自分が過去に感想書いた"Season of Blood"の著者Feagal Keaneだな。PBSだってのが理由かどうか知らないが、公式サイトでは関係組織の高官を含めた関係者(アナン、オルブライトからポール・カガメまで!)にインタビューがなされている。
そういえば、たまたま最近、同じくルワンダ虐殺を扱った映像作品についてSalonで読んだ。その"Shake Hands with the Devil"は当時ルワンダに駐留していた国連軍指揮官のダレール少将が、虐殺10年を経た同地に再訪する旅を追ったドキュメンタリー。ダレール本人が書いた同名の本(ISBN:0786715103)がもとになっているようだ。
ダレールというと、ツチ族虐殺準備が進行しているという情報提供を受け、平和維持活動本部に詳細と「意志あるところに道は開ける。やろうぜ!」と走り書きしたファックスを送った男だな。結局なしのつぶてに終わったが……。うーん、こっちも気になるな。
ところで、虐殺に深い関わりのあるフランス側からの作品はないのだろうか。