イスラエルの選択肢

(メモ書きフォルダを漁ったら書き途中のがいろいろ出てきたので、今週中に書けそうなやつは書いて片づけてしまおうと思う)
ウリ・アヴネリがアヴィグドール・リーベルマンについて書いた記事"Lovable Man"には、イスラエルの採りうる政治的選択肢について、わかりやすい要約がある。


 イスラエルは3つの願望のうち2つしか満たすことができない、そう古い金言にある。ユダヤ人国家であること、民主主義国家であること、地中海からヨルダンのあいだの全領土を保持すること、この3つのうち2つだ。イスラエルは全領土を保持したまま民主主義国家でいられる──だが、ユダヤ人国家であることはできない。領土を保持しユダヤ人国家でもいられる──だが、民主主義国家ではなくなる。ユダヤ人による民主主義国家であることもできる──だが、領土はすべて保持できなくなる。

 これが建国のはじまりからイスラエルの政策の基礎になった。シャロンの「分離」、オルメルトの「集束」*1の中心となる議論はまさにこれだ。イスラエルユダヤ人国家かつ民主主義国家に留まるには、占領したパレスチナ人の領土のうち、アラブ人の人口が多いところを諦めなくてはならないのだ。

 極右はコロンブスの卵めいた答えを用意している。3つ全部を達成することは可能なのだ。解決法は民族浄化──全アラブ人の追放だ。

アヴネリの記述をすこし敷衍してみよう。
イスラエルの望みは次の3つである。

  1. ユダヤ人国家であること
    • ユダヤ人がマジョリティを占める国家ということ(これが大まかにはシオニズムの意味)
  2. 民主主義国家であること
    • マイノリティを含む全員に投票権などを与えること
  3. 地中海からヨルダン川のあいだの全領土を保持すること

この3つのうち2つを選べる。なので3通りの可能性がある。

イスラエルとしては、Cはシオニズム終結を意味するので絶対にありえない。実際、Cを提案すると、反ユダヤ主義者(あるいは自虐的ユダヤ人)として激烈に非難されることがほとんどだ。
現実的な和平案はAということになるが、西岸地区のほとんどすべてが返還されなければ、パレスチナは国家として自立できないだろう。入植地だけではなく、西岸地区の水利権やイスラエル専用道路も放棄する必要がある。イスラエルはそうした点にかんして、当然ながら態度をはっきりさせていない。
イスラエルは現在、だいたいAとBの中間の政策を採っているといえるだろう。人によっては事実上Bだと言うかもしれない。
そしてアヴネリの言うとおり、もっとアクロバティックな解決策もある。

これにはイスラエル史を通して一定数の支持者がいる。たとえば、かつてのリクードの半公式路線だった「ヨルダンはパレスチナ」など。これはパレスチナ人はヨルダン王家を倒して、そこに国を作ればいいという主張。アリエル・シャロンはかつてこの政策の熱烈な擁護者だった。

*1:Convergence。日本語で正式訳語はわからない。