2006年の五冊

もう年明けているが。
振り返ってみると、去年はたいして本を読まなかったことが判明。ネットで時間を浪費しすぎたみたいだ。この傾向には、英語のニュースやブログを真面目に読むようになって拍車がかかった。「積読も溜まってるし、時間の使い方を考えないと」と去年書いたが、今年はもっとひどかった。ということで、十冊は無理。そもそもブログを更新する意欲そのものが低まったし、下にあげた本も一冊も感想書いてないし……。今年は無理にでも感想を書く方向でいこう。
あとは、ついにリストにあがるのが英語の本だけになってしまった。訳されてない本が多いうえに、英語の本が安すぎるのでしょうがない。Tony Judt "Postwar"ASIN:0143037757円ちょっとだもんな。この本がたとえ翻訳されてたとしても、日本だと上下巻で1万ぐらいになるだろう。これに慣れてしまうと、アントニー・ビーヴァー『ベルリン陥落』ASIN:4560026009・ケペル『ジハード』ASIN:4782801580買えない。ただ、読むのに1ヶ月ぐらいかかりそうな本が次々と積読に並ぶという欠点もある。

Michela Wrong "I Didn't Do It for You" ASIN:0007150954

エリトリアの植民地時代から独立までの歴史。The EconomistBooks of the year 2005に選ばれている。イタリア>イギリス>アメリカに見捨てられてハイレ・セラシエ統治下のエチオピアソ連に後援されたメンギストゥが支配する社会主義エチオピア、という順番で植民地化/支配されてきたエリトリアだが、やっと独立したと思ったら独立闘争のリーダーが……。

Avi Shlaim "The Iron Wall" ASIN:0393321126

いわゆるイスラエル史の「ニュー・ヒストリアン」の1人によるイスラエル政治-外交史。ニュー・ヒストリアンではベニー・モリスとイラン・パッペが有名だけど、個人的にはアヴィ・シュライムが一番安定している観がある。

Graham Allison, Philip Zelikow "Essence of decision" ASIN:0321013492

言わずと知れた名著『決定の本質』の第二版。議論の構造自体は変更されていないが、機密解除された文書や新しい研究によって内容は全面改定されているとのこと(自分は第一版は未読)。衝撃的に面白かった。第一版は復刊すべき。中公の軍事関係の文庫シリーズで出すわけにはいかないのかなあ。
共著者のフィリップ・ゼリコウは政治学者、国際関係学者。The Kennedy Tapesの著(編集)者ということで、本書の改訂に協力。ゼリコウはライス国務長官の友人で共著もあり。9/11委員会のexecutive directorを務めたり、ブッシュ・ドクトリンを形式化したThe National Security Strategyの草稿を書いたりしているので、陰謀論的文脈で語られることもあるが、学者としてはまとも。

Linda Melvern "Conspiracy to Murder: The Rwandan Genocide" ASIN:1844675424

イギリスのジャーナリストによるルワンダ・ジェノサイドの本。ルワンダ国際戦犯法廷の資料などを駆使して、ジェノサイドの計画段階の再構成を行っている。その点に関してかなりの新事実がまとまっている。ようやくアカズとゼロ・ネットワークの人脈の話がある程度捉えられた。

Gerard Prunier "Darfur: The Ambiguous Genocide" ASIN:0801444500

ルワンダ・ジェノサイドについての基本的文献も著しているジェラール・プリュニエによるダルフール本。
そういえば、プリュニエはル・モンド・ディプロマティークに今戦争中のソマリアについて記事を寄せているが、自分以外誰もブックマークしてないよ。