リチャード・ハースの「新しい中東」から

上のを書いてて、リチャード・ハースの"The New Middle East"を思い出した。ハースは外交問題評議会の会長。
論文の論旨を簡単に述べると、スエズ動乱以後のアメリカによる中東一極支配は終わり、イランの台頭とともにほかの外部勢力も流入するが、その帰結はどのようなものか、またアメリカが影響力を保持するにはどうするか──のような感じか。この論文は論文で面白いんだが、とりあえず上のに関係あるところだけおおざっぱに訳す。


 この機会を掴むためには、第一に中東情勢に非軍事的手段でもっと介入することだ。イラクに関していえば、アメリカ兵の再配置やイラクの軍・警察の訓練に加え、合衆国はイラク近隣諸国(特にトルコとサウジアラビア)とほかの利害関係者向けの地域フォーラムを設立すべきだ。2001年の介入以後のアフガニスタンの展開を制御するのを支援するために使われたフォーラムと類似した試みである。そのためには、必然的にイランとシリアの両者を参加させる必要がある。シリアはイラク流入する戦士やレバノンへの武器の流れに影響を与えることができる。(アラブ政府、ヨーロッパ、米国からの)経済的恩恵とゴラン高原の状況についての交渉再開へコミットするという交換条件を出して、シリアが国境を閉じるよう説得すべきだ。新しい中東では、シリアはワシントンよりテヘランと協同することに関心を持つという危険がある。だが、湾岸戦争のさいにはアメリカ主導の多国籍軍に加わったし、マドリッド和平会談にも参加した。この2つの意思表示は将来においてもシリアがアメリカと取り引きする道は開かれていることを示している。

 イランはもっと難しいケースだ。だが、テヘランレジームチェンジは近いうちには見込み無し、イランの核施設に対する軍事攻撃は危険、抑止は不確か、ゆえに外交がワシントンにとって利用できる最良のオプションとなる。合衆国政府は前提条件を付けずに、イランの核プログラムとテロリズム・外国の民兵支援を検討する包括的交渉を開始するべきだ。イランには経済、政治、安全保障に関する一連のインセンティヴを与えるべきだ。イランが侵入度の高い査察を受け入れる場合に限り、ごく限定されたウラン濃縮のパイロット・プログラムを認める。このような提案なら広範な国際的支援を得られるだろう。交渉が失敗したさいに、制裁を科すか、ほかのオプションへとエスカレートするさい合衆国が援護を望むなら、広範な国際的支援は必ず必要になる。こうした提案の条件を公ににすることは、外交が成功する可能性を高めるだろう。自国の政府のラディカルな外交政策によって支払わされる代価をイラン国民に知らしめるべきだ。テヘランの政府が国民の反対を気にかけているなら、アメリカの提案を受け入れる可能性は増す。