邦訳と訳者

Tom Segevの"Elvis in Jerusalem"って翻訳出てたんだ(id:kingfish:20060627、id:kingfish:20060628)。本によってはもう邦訳はでないもんだと決め込んで、確かめてみすらしないからなあ。しかし表紙は英語版のほうがずっといい。邦訳のはタイトルも相まって宗教本みたいだ。

で、ひょっとしたらアヴィ・シュライムやベニー・モリス*1の本も出てないかと思ってアマゾンで検索すると出てきたのがこの本、『パレスチナ大虐殺』ISBN:4880861448。この本については内容や評価は知らないが*2、注目すべきは訳者。フィンケルスタイン『ホロコースト産業』ISBN:4879191582が、日本ではユダヤ陰謀論者が主に想定されている読者層なのか。Amazonの「この本を買った人はこんな本も買っています」は、まさにその通りの結果としかいいようがないが……。
フィンケルスタインについてはここを参照。フィンケルスタインの本がネオナチやらホロコースト否定論者に利用されるのは当然予想されるし、本人も当然そのことを認識した上で出版しているのだろうが、訳者や出版社で無用に火に油を注がなくても、と思う。まあ、フィンケルスタインは邦訳者や出版社については関知していないだろうけど。メールでも送ってみようかしら。

*1:機密解除されたイスラエル政府の文書に基づいて、イスラエルの建国神話を解体したいわゆる「ニュー・ヒストリアン」と呼ばれる歴史家たち。トム・セゲフもこの一員といっていいのかな。あとでブログで書く予定。

*2:少なくともタイトルからは題材に必要な最低限の細心さを感じ取れない。原題は"The Israeli Holocaust against the Palestinians"。