ボブ・ドナールに有罪(でも無罪みたいなもんだよ)

クーデターといえばこれもあった。(via id:Projectitoh:20060621#p1)


「戦争の犬たち」のモデルに有罪判決

 インド洋のコモロで1995年、雇い兵部隊を率いてクーデター事件を起こし、凶悪犯罪者団体結成の罪に問われたフランス人の元コモロ大統領警護隊長ボブ・ドナール被告(77)に対し、パリの軽罪裁判所は20日、執行猶予の付いた禁固5年の判決を言い渡した。

 ドナール被告はアフリカ各地の紛争やクーデターに加担し、雇い兵がアフリカの小国の政権転覆を図るフレデリック・フォーサイスの小説「戦争の犬たち」のモデルになった人物。現在はアルツハイマー病を患っている。クーデター事件では当時のジョハル大統領が人質に取られたが、旧宗主国フランスの特殊部隊が介入、ドナール被告らを逮捕した。

しかし疑問の多い記事だな。雇い兵ってなんだ、傭兵ってのは差別語か? 政治的に正しくないのか? 凶悪犯罪者団体結成の罪ってのもアレだな。あと『戦争の犬たち』のモデルはフォーサイス先生自身のアクションじゃないのか。*1
それにこの記事だとフランスがヒーローみたいだ。だが、そもそもボブ・ドナールがコモロでクーデターを起こしたのは4回目で、前3回はフランスと緊密に協力していたことは確かだ。4回目のときもやはりフランスはクーデターを前もって知っていた。

“It is clear that the French secret services knew of the plan for a coup d’état conceived by Robert Denard, both its preparation and execution,” the court said.

“It is also evident that at the very least they did nothing to hinder it and that they therefore allowed it to reach its conclusion. As a consequence, that means political leaders must also have wanted it.”

だが、何か「間違い」が起こった。ドナールが十分本国と相談しなかったのか、フランスが体面を重んじたのか、もうこの騒ぎを起こしすぎる爺さん(クーデター当時70歳!)には引退してもらおうとエリゼ宮のみんなが思ったのかは定かではないが、フランスは特殊部隊で介入した。しかし、引用部分にもあるように、フランスはジョハルの退陣そのものには賛成だった。ジョハルはフランスの介入後にも大統領の座に戻されることはなかった。*2

*1:そういえば、ついにフォーサイスも例のクーデター話を認めた。参照。これも上記"The Wonga Coup"の著者の功績。

*2:このへんはフランソワ=グザヴィエ・ヴェルシャヴ『フランサフリック』ISBN:4846102114。この本は話半分としてもめちゃくちゃな本だ。