Turn left, turn right

ディッシュといえば彼のSF論"The Dreams Our Stuff Is Made Of"を読み中だが、予想に反して正統的なSF論になっていると思う。
いろいろ面白い話があったのだけど*1、一番驚いたのがこれだ。さて、以下のXは誰でしょう?


 あるいはXを例にとってみよう。後にわが国(注:アメリカ)最大のSF作家と広く目されることになる男である。1938年、Xはカリフォルニア州の第51回州議会下院議員選出選挙の議席を狙って、民主党からの指名を得るため予備選挙に立候補していた。だが、民主党員の対抗馬はいなかったにもかかわらず、Xは総選挙に出馬できなかった。なぜなら現職下院議員であった共和党の候補者チャールズ・ライアンズが民主党側の候補者としても登録することに成功*2、両党の切符を手にしたライアンズは再選されたからだ。こうしてXの短い政治キャリアは終わった。
 ライアンズが勝利した理由は十中八九、当時31歳だった相手がEPICと関係していたためである。EPIC(注:End Poverty in Californiaの略)は擬似社会主義的な第三政党で、小説家兼活動家のアプトン・シンクレアによって設立された。シンクレアがカリフォルニア州知事選に民主党から出馬したとき、両党の保守派は慌てふためき、彼を止めるためにあらゆる努力をはらった。ルーズベルト大統領は支持を取り下げた。映画スタジオは州から出ていくと脅迫した。未来の最高裁判所長官アール・ウォレン*3は宣言した。「これはもはやカリフォルニアにおける民主党共和党の争いではない。急進主義と社会主義にたいするアメリカ国民とカリフォルニア住民の十字軍だ」。Xは最盛期には200万の発行部数を誇っていた政治的ニュースレター"Upton Sinclair's EPIC News"の編集者をしていた。加えてXはEPICが全国的運動として開始される前、憲章を書くためにシンクレアが選んだ6人のうちの1人だった。明らかにこの若者は単なる同調者ではなく、この通例では履歴から抹消されている時期について彼が口にしたように「中道民主党員」だったわけでもないのは確かである。
答え:ISBN:4150103453。まあ2つ目の文でわかっちゃうと思うが、驚愕の事実だな。

*1:ディックがディッシュの『キャンプ・コンセントレーション』を読み、FBIにこの著者はアメリカにとって危険だと手紙を送ったエピソードなど。このおっさんは……。レムのときも似たような話があったよな。

*2:そんなことが可能なんだと。cross-fileというらしい。

*3:ケネディ暗殺を調査したウォレン委員会のウォレンだ。