トーマス・M・ディッシュ『アジアの岸辺』ISBN:4336045690

読了。
表題作「アジアの岸辺」のような作品を味読する能力を失ったので、十分に味わいきることはできなかったが、より「ディッシュらしい」悪意と黒い笑いに満ちた短編は期待通りの面白さ。「死神と独身女」、「第一回パフォーマンス芸術祭、於スローターロック戦場跡」が特に良かった。
あ、「第一回パフォーマンス芸術祭……」はヴォイナロヴィッチの訳者として渡辺佐智江さんが訳すべきだと思った。ジェシー・ヘルムズ*1・センター! 問題は血とか未成年とかじゃないよ! 現代アートにもっと詳しけりゃ他にも笑いどころがあるんだろうな。

*1:保守派上院議員。「猥褻な表現や人格を毀損する作品に対して全米芸術基金の援助を削減する」「ヘルムズ修正案」を提出・可決させ、芸術表現の自由を規制。文言は聞こえはいいが、実質的には連中の「アメリカ的価値観」にそぐわない芸術的主題の検閲に利用された。ほかにセイフ・セックス・キャンペーン(エイズ教育プログラム)の縮小を要求する「ヘルムズ修正案」も提出、これも可決させている(ヴォイナロヴィッチ『ナイフの刃先で』より)。