フレデリック・フォーサイス『戦争の犬たち』


独裁者キンバ大統領が恐怖政治を敷く西アフリカの新興国ザンガロに有望なプラチナ鉱脈があることを、イギリス大資本マンソン合同鉱業は探りあてた。その報に接した瞬間、マンソン社の会長ジェームズ卿の頭の中に、プラチナの採掘権を狙うおそるべき陰謀が組み立てられた。それからほどなく、パリに住む白人傭兵のリーダー、キャット・シャノンのもとへ、巨額の報酬と引きかえに提示された依頼は、ザンガロに軍事クーデターをおこし、大統領キンバを抹殺することだった。
読んだ。3部構成で傭兵によるクーデター作戦を描く。第1部で上のあらすじにある背景説明を行い、第2部で傭兵たちによる武器調達などの準備を描写。ここまでで全体の90%ぐらいを費やして、クーデター自体は50ページぐらい。
第1部は植民地解放時代の傭兵の主立った面々の名前と経歴が語られ、色々参考になった。第2部はひょっとしたら事実そのままの可能性すらある*1ので、船舶や武器の購入の手続きなど細部に至るまで非常にリアル。
淡々とした事実描写が中心で、傭兵側のエモーショナルな面や「なぜ傭兵になったのか」などはあまり描かれないんだが、2回ほど主人公の心情吐露の場面(上巻、下巻それぞれの最後あたり)があってそこはなかなか感動的だった。というよりフォーサイス本人の主張だろ、あれは。

*1:フォーサイスはビアフラ難民に安住の地を提供しようとして、赤道ギニアのクーデターを企てた疑いをもたれている。フォーサイスはもともとロイターの海外特派員で、ビアフラ内戦のときも取材に行っていた。