シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』

なんとなく僕のカテゴリーの中でブラッドベリスタージョンはひとまとまりになってて。で、ブラッドベリはそれほど好みでないし、スタージョンも「まあチャンスがあったらな」ぐらいに考えていた。その後『ふたりジャネット』は出てすぐ買い、面白かったし、ベスターの短編集も≪奇想コレクション≫から出るというので、投資するぐらいの気持ちで買ったんですが・・・
参った。センチメンタルな面が無いわけではない。それどころかストレートで感情的なメッセージを作品のいくつかでは突きつけてくる。スタージョンの最大のテーマが「愛」であるとはよく言われることらしいし。それでも嫌な気分にならないのは、人物をクッキリと描き出す文章技巧と、その背後に感じられるスタージョンの繊細でいて闊達な視線ゆえか。いや、自分には上手く語ることができない。
核戦争後の世界を描いた先駆作(1947年!)「雷と薔薇」、緊張感に溢れた「タンディの物語」も素晴らしいが、やはり「孤独の円盤」が超絶。月並みな器量の女性に降りかかる悲惨、心やさしい障害者の男、孤独、2人の出会い。ハッキリいって自分が一番嫌いなタイプの話になりそうなのに、これほど感動させられるとは。
もちろんセンチメンタリズムとは無縁な「裏庭の神様」、「ぶわん・ばっ!」あたりも最高。
『海を失った男』もあわてて買いました。スタージョン短編全集にも手を出しそうです。高いんだろうな、と思ってたらペーパーバックも2000円ぐらいであるし。ディレイニーの序文つきの2巻ISBN:1556433018パルプ雑誌転載の表紙がすばらしい3巻("Killdozer!")ISBN:1556433271か。

しかしこの調子だと昔のSFでこれから読む本(小説)はすべて賄えるんじゃないか? 確実に気に入るであろうディッシュとかまだ全然読んでないし、デイビッドスンやスラデックも気になるし。