『塵クジラの海』 ISBN:4150203539

なんで今ごろ出されるか理解に苦しむ上につまらない。スターリングはよく小説が下手だと叩かれるが、僕個人は別にそう思っていなかった。でもこの作品については認めざるを得ない。文句なしに下手だ。
主人公は40代前半のいわばロマン派的麻薬中毒者なのだが、当時のスターリングの筆力が追いついてなくて、性格に一貫性がなく、皮肉な口調も上滑り気味。そもそも40代と感じられない。そして語りが一人称のため、この欠点が全体をダメにしている。スターリング本人が序文で語る通り、これは習作のレベルであり、本人が出版を固辞していたのも当然なのに、なぜ出版されたんかなあ。
これ読んで「スターリングって大したことねえな」と思われると悲しいので、初めての人は『スキズマトリックス』を読んでください。というより『塵クジラ』以外の作品はどれも素晴らしいです。
何がすごいってこれ読んでスターリングの才能を看破したハーラン・エリスンだな。まあ世界のアイデアとかに萌芽が感じられるとはいえ・・・