"Pattern Recognition" ISBN:0425192938

ネタバレ注意。

だいぶ前に読んだけど、正直がっかりだ。ギブスンが現在を描いた初の作品として期待していたんだが・・・ 作品の執筆は以前から始めていたが、完成は9/11以降のはず。それであの結論とはアンマリじゃないか? ほとんど反動的といってもいい。サイバーパンクの「パンク」はどこへ消えた?
例えば、同様に現代を舞台としたスターリングの「小さな、小さなジャッカル」(『タクラマカン』所収)や"Zeitgeist"と比較したとき、政治的・社会的な認識に雲泥の差がある。"Zeitgeist"はポストモダン的ヨタ話(スターリングはこの辺の免疫が低い気がする)を除けば予言的ですらあるが、そうした方面でギブスンはまったく応えることができない。まあ、前からそのへんは期待できないのはある程度わかっていたが、ストーリー(ヒロインの父が9/11当日にグラウンド・ゼロで失踪)からして何かしらアテがあるんだろうと思って期待してたのに。
まあ、あいかわらず文化的記号のバラ撒きかたは上手い。ある有名なマスコットキャラのグレートオールドワン風味な描写に笑ってしまった。以下引用(*部分は別のこれまた有名なキャラが入る)

"...in one of his earliest, most stmach-churningly creepy manifestaions, not the inflated-maggot de-shelled ***** ****** of present day, but that weird, jaded, cigar-smoking elder creature suggesting a mummy with elephantiasis."

あとはヒロインの友だちの映画監督(映像作家だっけか?)からくるロシアからのメールが良かった。ウォマック風ロシア("Pattern Recognition"はジャック・ウォマックに献げられている)。