Alistair Horne "A Savage War of Peace"って翻訳出てるのか!

(あまりに説明が投げやりだったのでちょっと追記した。)
しかしふざけたタイトルだな、『サハラの砂、オーレスの石―アルジェリア独立革命史』ASIN:4807494163、内容にも原題にも即してないだろって思ったら、出してるのは第三書館か。ひどいな。別に訳がしっかりしていればどこが出そうと問題はないんだが、出版社とタイトルで内容が勘違いされているとすれば不幸な話である。いや、こんな本を買う人間は当然事情は分かってるのかな? まあいい。
アリステア・ホーン(1925-)は近現代フランスが専門のイギリス人歴史家。軍事に明るく、普仏戦争パリ・コミューン*1第一次世界大戦のヴェルダン*2ナチスドイツの手によるパリ陥落*3をそれぞれ描いた〈フランス三部作〉、モントゴメリーの伝記などの著書がある。ウィリアム・バックリーJr.と友人で、これまた友人であるハロルド・マクミランの伝記を書き、今はヘンリー・キッシンジャーの公式伝記を執筆中ということだから、保守だろう。
77年に出版された"A Savage War of Peace"asin:1590172183アルジェリア戦争史の決定版、古典として広く認められている。まさにキプリングの"White Man's Burden"からとられた題名通りの内容であり、邦訳のようなセンチメンタルさは微塵もない。各陣営の扱いは公平であると思われたが、おそらく資料の関係からフランスの記述のほうが詳細であり、“アルジェリア独立革命史”であるとは言いがたい。出版社からの紹介にあるような「民族解放戦争を『自由・平等・博愛の国』フランスを相手に八年間闘い続け、勝利するまでを全面的に記録した大著」ではない(ああ、もちろんアルジェリア戦争アルジェリア独立革命でもあるから、後者であると主張したければできる)。
同書はイラク戦争開始後、counterinsurgency(≒対ゲリラ戦)を理解するための本として米軍指揮官のあいだで読まれはじめた*4。また、キッシンジャーブッシュ大統領に薦めたりしたこともあり、2006年にNew York Review of Booksから再発されている。

*1:"The Fall of Paris: The Siege and the Commune, 1870-1"asin:0141030631

*2:"The Price of Glory: Verdun 1916"asin:0140170413

*3:"To Lose a Battle: France 1940"asin:0141030658

*4:"Alistair Horne's A Savage War of Peace, has been an underground bestseller among U.S. military officers over the last three years, with used copies selling on Amazon.com for $150", Thomas Ricks "Aftershock";同様の理由から映画『アルジェの戦い』もよく観られた。