A Confederacy or Statelets?

イラクの分裂について、専門家やマスコミが語ることも珍しくなくなってきたが、そうした方向についていくつかの動きをまとめる。
シーア派の最有力組織、イラクイスラム革命最高評議会(SCIRI)の指導者アブドゥル・アジズ・アル=ハキムが南部シーア派諸州の地域連合(superprovince)の設立する法律の制定を提案。この地域連合はクットからバスラまでで8つの州を包含するとされる。

以前まとめたForeign Affairsの特集でLeslie Gelbの主張していた一種の連邦制に向けての動きともいえるが、連邦制案の最大の懸案だった憲法、石油歳入の分配、安全保障といった重要な争点について、連邦制の成功に必要なシーア派の妥協はない。アル=ハキムが日曜に発表したコミニケによれば、この地域連合は独自の議会、首相、治安部隊を備え、南部で採取される石油・天然ガス歳入はこの地域政府の手に渡るという。

当然スンニ派は世俗派(ナショナリスト)・宗教政党の双方ともに激しい反対を表明している。実際この動きは、クルドシーア派地域の自治問題について憲法上の妥協案を協議することを条件に統一政府に参加したスンニ派政党とって裏切りに近い。SCIRIのこの動きにはムクタダ・サドルの党やファディーラ党などのシーア派政治組織からも反対が表明されている。ここ1,2ヶ月でシーア派内の対立も強まっており、シーア派の政治連合UIA分裂の危機も言われている。

一方、半自治をすでに実現しているクルド人地域は現在、イラク国旗の掲揚を禁止し、議会などにはクルドの旗のみが翻っている。2人の有力なクルド人指導者マスード・バルザーニ(クルド人地域の大統領)とジャラル・タラバーニがこの動きを主導、支持している。クルド人指導者はフセイン時代を想起させる国旗デザインの変更を求めるためだとしているが、独立へ向けての下地作りではないかとも危惧されている。あるいは、以下の目的を達するためだったのかもしれない。


Meanwhile, the Higher Commission for Reconciliation and National Dialogue has decided to seek a site other than Irbil (Barzani's base) for the holding of its conference. Obviously, an attempt to reconcile Sunni and Shiite Arab Iraqis will require that the Iraqi flag be flown.
それとも、イラク首相の政治顧問が言うようにバルザーニのスタンドプレーで、反クルドイラク中央政府に抗するクルドの国民的英雄として自分を印象づける政治的身振りだろうか。
残るスンニ派地域については、Washington Postに興味深い記事が載っていた。スンニ派の中心地域アンバール州の現況について、海兵隊諜報部が提出した秘密報告書について報道した記事である。
この報告書によると、アンバール州ではイラク中央政府の力はほとんど及んでおらず、また州政府も崩壊している。この政治的真空はアルカイダ系の武装組織によって埋められている。軍事的にも膠着状態に陥っており、米軍は安全地帯を基地周辺以上に拡げることができない。報告書について語った軍関係者らは、アンバール州の社会的・政治的状況の改善に向けて米軍ができることはほとんどないとしている。
スンニ派地域についての状況評価としてはそれほど驚くべき点はないかもしれない。だが、一般的に言って、米軍は今まで公式声明でも、内部報告書でも楽観的な姿勢を保持してきたので、こうした報告が海兵隊から出てきたのは驚きではある。