The 10 Best Books of 2005

New York Timesの今年のベスト10冊が発表された。うーん、ここに『海辺のカフカ』が入っちゃうんだ。読んでないけどこの読書会の模様から判断するとどうも……。あとはゼイディー・スミスとかイアン・マキューアンとか。ノンフィクションのほうでGeorge Packer"Assassin's Gate"(書評訳)が選ばれていた。
ほかに今年注目の100冊注目のこどもの本も。
100冊の小説部門で1冊読みたいのを選ぶとすればウィリアム・ヴォルマンの"Europe Central"ISBN:0143036599。全米図書賞(National Book Award)を受賞し、ヴォルマンの最高傑作との評価を得ている。ハードカバーは40ドルもするので、ペーパーバックが来年出たら買うつもり。
その"Europe Central"をNYTの書評(参照)から簡単に内容を紹介。"Europe Central"は第二次大戦中のドイツとソヴィエトが主な舞台。ウラソフ将軍やパウルス将軍、画家のケーテ・コルヴィッツなど、歴史上の実在人物が多数登場し、2つの全体主義体制での個人の小さな闘いが様々な時と場所を舞台に37の短編で綴られる。短編全体を緩やかに結びつけるのは、本書の主人公の1人である作曲家ショスタコーヴィチの物語。もっとも実在の人物でも、出来事の推移には少々手が加えられている場合もあるらしい。
"Europe Central"はイントロダクション的一編と、「挟撃作戦」(pincer movement)と題された18のペアからなる。1つの「挟撃作戦」はたいてい同時期の出来事を扱い、一方がドイツ、他方がソヴィエトを舞台とするといった形式。大半のペアは数ページのスケッチと、もっとまとまりのある短編で構成されている。*1NYTの書評の例を挙げると──


 『ゾーヤ』でヴォルマンは、処刑されたロシアのゲリラ兵ゾーヤ・コスモデミヤンスカヤが「1億9000万のわれわれ皆を縛り首にはできない」という発言によっていかにプロパガンダのヒロインとなるかを5ページで語っている。ヴォルマンがゾーヤと対にするのはドイツSS将校クルト・ゲルシュタインで、ヴォルマンはショスタコーヴィチと並ぶ本書の歴史的主人公の1人と位置づけている。55ページを費やした「汚れなき手」では、チクロンBガス室への輸送を妨害し、スイス、スウェーデン、ヴァチカンの懐疑的な役人に警告することで、「最終解決」を遅らせようとするゲルシュタインの必死の試みが描かれる。プロパガンダ作戦に失敗し、拷問のような道徳的苦しみを感じていたゲルシュタインは、ジェノサイドの罪に問われると自殺する。

*1:目次を見るとわかりやすい。