セックスマシーン・ネクスト・ドア

ブルース・シュナイアー「ソニーCDが明らかにしたセキュリティー業界の本質的問題(上)」の続きを探していてみつけた。元記事は"The Sex Machines Next Door"。内容(特に写真)は18禁?なので注意。
写真に関してはWiredのほか、本書のブログGizmodoの著者インタビュー著者のホームページなどでも見ることができる。
「セックスマシーン・ネクスト・ドア」
── by Xeni Jardin
ジョン・トレイヴンはセックスマシーンの発明家にはみえない。カウボーイにみえる。
だが、キリスト教徒で、離婚経験のあるこのアイダホ出身の農場主は、ガレージ製作のエロティックな装置の作り手の1人なのだ。こうした装置をティモシー・アーチボルドの本『セックスマシーン──写真とインタビュー』は取り上げ、〈サンプステア〉や〈ギャングバング〉のような名前を付けた製作品を愛好する人々の秘密のサブカルチャーを記録している。

「そーら、離婚経験あり、性関係は淡泊なキリスト教徒男性が、セックスマシーンを携えてご登場だ」本書にあるトレイヴンの独白だ。「アイデアが浮かんだのは結婚生活最後の1、2年か。夫婦のあいだの、なんでもいい、何かしらを救い出そうとする死にものぐるいの試みだった……ほかはともかく性生活ぐらいは。実際は完成させて渡す前に、妻に離婚に追い込まれたわけだが」

「結婚の証明と、夫婦2人のあいだでだけ使用すると誓う署名付きの文書を、マシーンを注文した客には要求しているよ。銃砲店が銃を販売する前に、年齢証明と銃器取り扱い安全審査に合格した証明を要求するようなもんだな。性的な興奮は人間の魂そのものへの戸口だ。軽々しくちょっかいを出すべきじゃない」

『セックスマシーン』の写真はミディアムフォーマットのハッセルブラッドで撮影され、主に周囲の自然光に頼っている。結果として得られた美的効果は、舞台張っておらず、無理に感情をかきたてるようなところがない。〈ハイド-ア-コック〉の発明者のキッチンに足を踏み入れると、ポップタートの箱とトスチートスの食べかけの袋にはさまれたマシーンが正面からこっちを見返してきた──そんな雰囲気だ。ピッチフォークの代わりに、電動ディルドーを手にした『アメリカン・ゴシック』を思い浮かべてほしい。あるいは、イドから這い出してきた最高に猥褻なものを描いたノーマン・ロックウェルの絵画を。

ただし、タイトルは挑発的だが、『セックスマシーン』に性的感情をかきたてる意図はないとアーチボルドは言う。「ポルノは出し物さ」Wired Newsに対して語った。「僕はそうした人々の生活を記録するほうにもっと興味があった」

サンフランシスコ・ベイエリア在住のコマーシャルフォトグラファーであるアーチボルドが、雑誌の依頼を受けたときにこのプロジェクトは始まった。シリコンバレードットコム企業のランチルームで人気が出ているフーズボールに似たゲームの発明者を撮影してほしいということだった。

「発明こそ彼の情熱で、実に誇らしげだった」アーチボルドは思いおこす。「彼は言った。『ゴールを入れたときのあいつらの顔を撮ってくれ!』そのとき僕が思ったのは──誰もそこまでのめりこんじゃいない、ただのフーズボールじゃないか。だけど彼は自分の発明にそこまで入れこんでいたんだ」

アーチボルドは同じような熱狂を引き起こす対象を見つけられるか、ネットでDIY発明家カルチャーとコンピュータ改造について調べた。彼は最後にセックスマシーン発明家のメーリング・リストに出くわした。

「彼らはマシーンの写真をフォーラムにポストしていた。でも、そうした写真の背景のほうがずっと面白い何かをあらわにしていたんだ。空っぽのヨーグルトの箱、ミキサー、ベビーカー。誰もがなじみのある日常生活のディテール。マシーンは人間に似せてはいるが、異星の産物のようで、肉質の付属物があった。これまで見てきたどんなものにも似ていなかった」

アーチボルドは匿名のマシーン製作者たちにメールで質問したが、一様に丁寧な断りが返ってきた。大半は製品を売りに出しておらず、プライバシーを明かす意思もなかった。

1年後、アーチボルトはマシーンセックスのポルノサイトFuckingmachines.com(注:ポルノサイト)の管理者にコンタクトをとった。返事が来て、生活とスタジオについて明かす気になるかもしれない発明家たちを紹介された。

すぐに、慎重なメールが返信されてきた。何人かとは電話もした。だが、1つの疑問は残った。こうしたマシーンの背後にいるのはどんな人間なんだろう?

「ドアの呼び鈴を鳴らしたら、ジッパー付きのレザーマスクをかぶった男が出てくるんじゃないかと思っていた。みんながみんな地下室暮らしで、生身の女性とは関係を持てないようなね」とアーチボルドは語る。「でも違ったんだ。僕と変わらない人たちだった。うん、完全に変わらないとはいえないよ。だけど、彼らの日常生活と、並はずれた関心事とのあいだにある緊張関係を理解できたんだ」

アーチボルドは国中をまわり、マシーンと製作者の両方を撮った。本のアイデアが形になると、アーチボルドは写真集出版社のタッシェンに連絡を取った。

「断りの手紙のことはまだ覚えている」アーチボルドは言う。「だいたいこんな感じだった。『我が社で出版するには、高度に芸術的な美点を備えているだけでなく、自慰行為に使えるぐらい読者を興奮させてなくてはなりません。本書は前者を満たしていますが、後者に該当しません』。たしかにがっかりしたけど、自分が正しい音色を奏でたという感触もあったよ」*1

*1:訳に自信なし。タッシェンってそんな会社だったっけ?