カルヴィン・トムキンズ 『優雅な生活が最高の復讐である』ISBN:4102144218

フィッツジェラルドがあこがれ、『夜はやさし』のモデルにしたという画家*1ジェラルドとセーラのマーフィ夫妻の生活を様々なエピソードで綴る。
1920年代のパリ、フランスでの交友と生活が中心。友人、知人には夫妻と同様の国外居住者や同時代の芸術家の燦然たる名前が並ぶ──ピカソヘミングウェイ、ドス=パソス、ディアギレフ、コクトーガートルード・スタインエリック・サティ、レジェ、そしてもちろんフィッツジェラルド夫妻。
題材は魅力的で、個々のエピソードも興味深いがちょっと短すぎる。2時間程度で読み終わる分量。これの何倍も書ける素材なので物足りなく思った。あとは話の結末あたりでフィッツジェラルドの奇行のまとまったエピソードが挟まれるので、そっちの印象が強くなりすぎてしまった感がある。
しかし、すかしたタイトルだなあと、そのせいで内容も確かめずにこの本を敬遠していたのだが、実際に読んでみて意味とコンテクストを押さえると、なかなかに感動的な言葉ではあった。そこは読んで確かめてほしい。

*1:ポップアートの先駆者のような評価がされているようだ。作品はこれこれなど。