『利己的な遺伝子』について

混乱があるような気がします。ただし自分は文系で『利己的な遺伝子』を読んだのもだいぶ前なので、間違いや勘違いがあるかもしれません。あと、『利己的な遺伝子』は英語版しか持ってないので、ちょっと読みにくいですが。


ドーキンスが言う「遺伝子」とは、染色体でもDNAでもなく、あるいはシストロン(たんぱく質に関する遺伝情報を運ぶDNA連鎖の単位)でもない
・それは、交叉によって破壊されることのないDNA連鎖の単位、つまり交叉が起こりやすい地点から次の起こりやすい地点までのDNA連鎖を意味している
・「遺伝子とシストロンではDNA連鎖の区切られ方が違う」
シストロンは遺伝子の条件を満たしていますが、もっと長い単位でも遺伝子の条件を満たし得ます。ドーキンスは"A cistron presumably qualifies,but so also do larger units."(p33、第3章)で書いています。だからある意味ではシストロンを「遺伝子」と呼ぶことになんの問題もありません。生物学でもそういう使い方をすることが多いでしょう。

「遺伝子とシストロンではDNA連鎖の区切られ方が違う」とありますが、特にそういう意味合いはありません。「つまり交叉が起こりやすい地点から次の起こりやすい地点までのDNA連鎖を意味している」ということもないでしょう。

ドーキンスは"I am using the word gene to mean a genetic unit that is small enough to last for a large number of generations and to be distributed around in the form of many copies"(p33)と書いています。
ということで、染色体と遺伝子とシストロンの関係をDNAの長さで表すと

  • シストロン≦遺伝子<染色体(1本)

になります。遺伝子は自然淘汰の単位なので、ある程度世代から世代へと伝えられなければ役目を果たしません。ただあまり長すぎると、交叉や突然変異の影響で同一性を保てなくなるので(長ければ長いほどその確率が増す)、ほどほどの長さでないと困ります。逆に短すぎると、表現される情報が少なすぎる結果になります。
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