クリストファー・ハドソン『キリング・フィールド』ISBN:4042445012
Bookoffで100円だったので買った。
てっきり映画のもとになったニューヨーク・タイムズの記者の手記だと思ってたが、映画のノベライゼーションだった。実在の人物なのに作者は好き勝手やってて、主人公らはのっけから冷笑的言辞、罵倒、ブラックユーモアを連発する。例を挙げると──
- 他人の褌で相撲をとって憚らないたぐいの男だ
- 「いい子だいい子だと大使館の連中にしょっちゅうおつむをなでられてるんで禿げちまいやがって」
- 「火星人がよろこんで空飛ぶ円盤を貸してくれるってんならいざ知らず」
- 「アメリカ人なら高いところから小便するのは慣れてるだろ」
- 「粒選りのゴマすりどもが、提灯記事を書きにきやがった」
- 「なんだそれは?」「生理用ナプキンさ。氷水にひたしたんだ」
- 「そんなものが北京に飾られていると考えてもご覧なさい。リージェント街のなかほどで中国人が銃剣でイギリス人を芋刺しにしているような記念額が飾られていたとしたなら。しかもショックで山高帽が浮かんでたりして。そして下のほうには《中央ロンドン戦役、一八九八年》とあってね」
- その台詞は片眼鏡をかけたヴィクトリア女王時代の産業資本家を連想させた。恥を忍んで生意気な炭坑夫の代表団と会談するに先立って、まずふかふかのウィルトン・カーペットに炭塵をばらまかれてはかなわないと玄関広間の絨毯を片づける資本家だ。
- 「シド、おまえさんはあの映画を見たかい? 2人の男が核実験場へ迷い込んで被爆したんだが、放射線障害を受けずにすんだのは、ひとえにピーナッツ・バターを喰ってたおかげだって話を?」
- 「おまえが回顧録にこの件を書くときは1ページ1ページ脚注をつけてやるからな!」
最後のは捨てゼリフとして自分も積極的に使っていきたい。
しかしクメール・ルージュ体制には、いくら事実を知っても想像を絶したところがある。