メディア-暴力の神話

SalonのHarold Schechter"Savage Pastimes: A Cultural History of Violent Entertainment"の書評で知った記事。この本はメディアの技術的移行がある度に、暴力的な娯楽作品も花開き、その都度メディアの暴力性について激しい非難が巻き起こってきたことを文化史的に跡づけている。その書評部分も面白かったのだが、メディアと暴力にまつわる論争のリンクもなかなか充実しており、中でも興味を惹かれたのはデーヴ・グロスマンについて触れている上の記事だった。
グロスマンといえば、前に感想を書いた『戦争における「人殺し」の心理学』ISBN:4480088598。彼は現在*1、反暴力メディアの闘士として活動を行っているらしい(彼の公式サイトでも活動の一端は知ることができる)。まあそれ自体はいいとしても(よかないが)、発言内容が完全にプロパガンダと化していてびっくりしてしまった。『戦争における〜』はいろいろ欠点はあるにせよ、いい本だったのに。
グロスマンいわく、「読むことを学ばなくては、子供は現実と空想の区別ができない!」(だから俺の書いたミリタリーSFを読め、か?)*2。「我々は人類史上、平時としては最も暴力的な時代に生きている。なに、殺人率が下がっている? それは医療技術が進歩したせいだ!」*3。「科学界と医学界の大部分が認めていることだが、暴力犯罪の50%以上に対する責任はメディアにある!」*4
いやはや。
記事には他にも有名な反メディアの論文のデバンキングや、メディアと暴力の関係に否定的な論文の紹介など、いろいろ面白いところがあるんだが、まとめている時間がないや。
おっと、記事を書いたRichard Rhodesは原爆製作を綴ったノンフィクションでピューリツァー賞を取っているそうだ(邦訳はこの本だな ISBN:4314007109)。

*1:といってもも数年前からだが。

*2:"Before children learn to read, they can't tell the difference between fantasy and reality. That means everything they see is real for them. When a three year old, a four year old, a five year old sees someone on TV being shot, raped, stabbed, murdered, for them it's real. It's real!"

*3:"We live in the most violent era in peacetime human history."

*4:"You've got to realize that every major medical and scientific body in the world has identified the fact that at least 50 percent of the responsibility for violent crime lies on your shoulders"