アンナ・ポリトコフスカヤ服毒か(リンク)

北オセチアも人質の数が1500人に修正されるなど混乱しているが、昨日取りあげた『チェチェン やめられない戦争』の著者アンナ・ポリトコフスカヤが重体、原因は毒物らしい。しかし記事でさりげなく触れられているけど「放射性タリウムによって毒殺された同紙スタッフ」って……。
上の本は買って今読んでる。トルストイ北コーカサス従軍記を冒頭に引用後、チェチェンの歴史をコンパクトにまとめたものが続き、今現地の状況の具体的記述に入ったところ。低空飛行するヘリコプターの爆撃を避けるため地面に突っ伏してる最中に交わされる、死刑台上のユーモアともいうべき会話の記録──

「ヘリコプターが襲ってくると、私は紙挟みを手にとって何か書いてるふりをするんだ。これは効き目があると思うよ」
(…中略…)
パイロットが見れば、俺はテロリストじゃなくて仕事をしているんだってわかるだろう?」
(…中略…)
「見せてくれよ、見せて」
「ロシア人の分の紙挟みがなくなっちゃうな」
チェチェン人は戦争だってのに、いったいぜんたい、なんだって誰も彼もが紙挟みを持って歩くんだ? ってプーチンは考えるだろうな。銃を持ってなきゃいけないのにって」
「そうなると連邦のやつらにも紙挟みが支給されて、チェチェン中が紙挟みだらけになっちゃうわけだ」
ヘリコプターは疲れを知らず旋回を繰り返している。子供たちの悲鳴が地面を揺らしている。機銃掃射はほんの一時もやむことなく、絶え間なく投下される爆弾が炸裂する。ひどいことになったものだ。

すばらしい。そして、すばらしいだけにこの冗談の話し手をその後襲った運命は一層の悲しみに満ちている。まだ途中で拙速な判断かも知れないが、すでにこの本に惚れこんでしまった。
この人にこんな形で死んで欲しくはない。回復を祈る。