3 The Privatized Military Industry Distinguished

まず“傭兵”とは何かを明確にする。これはジュネーブ条約でも定義されている*1が、政治的妥協のため、国家間の紛争参加者のみ傭兵と認める(つまり内戦は除外)など限定的すぎる定義なので、本書ではより単純で現実に則した定義を用いる。
傭兵とは──

  • 自国政府以外の雇用者のもとで戦う個人
  • 目的は経済的利得(これにより義勇兵が除外される)
  • 軍人としての特殊な義務を負っているわけではない(これによりグルカ兵やフランス外人部隊と区別)
  • 法的な紛糾を避けるため、非正統的な雇用方法に頼らざるを得ない
  • 個々の兵士のアドホックな集まりで永続的な組織ではない
  • (組織の弱さから)直接戦闘支援か軍事訓練の指導などの役割に限られる

では、今までの傭兵とPMFの違いは何か? それは本質的にはPMFが法人として組織されている点である。そのため他の会社と複雑な財政上の繋がりを持っており、事実いくつかのPMF多国籍企業の一部となっている*2
他の重要な相違点もこの法人化から帰結する。上にあげた項目も再掲してPMFと傭兵の違いを箇条書きしておく。

  • 個人ではなく法人
  • 傭兵のアドホックな集まりとは違い、一般の会社同様、組織としてカッチリとした構造を持っている
  • 個々人の利益ではなく会社の利益を追求
  • オープンでグローバルな市場
  • 事業内容の拡大とそれによる顧客層の多様化
  • 安定した効率の良い雇用方法を活用可能
  • 他の会社との複雑な財政上の繋がり

*1:しかしよくわからないのは傭兵はジュネーブ条約で禁止されてるんじゃないの? 「いや、警備とか後方支援してるだけっスから。戦闘には参加してないよ」とでもいうのか? それとも個人でないからいいのか? そんなわけはないよな。しかしこれを読むとそんな感じの理由を並べているようなんだが。多分最後までこの本を読めばわかると思うけど。

*2:ノースロップ・グラマンの子会社であるVinnell。フォーチュン500企業のL-3に買収されたMRPI。世界有数の人材派遣会社CSCの子会社になったDynCorp。カーライル・グループの子会社BDMなど