"The lost boys, thrown out of US sect so that older men can marry more wives"

最高で1000人に達する10代の少年が、モルモン教ファンダメンタリスト分派のコミュニティから追放されたとのユタ州の発表。目的はセクトの成人男性が多数の妻を持つことができるようにするためらしい。

この分派の名は"Fundamentalist Church of Jesus Christ of Latter-day Saints"(FLDS)という。つまり、モルモン教の正式名称"Church of Jesus Christ of Latter-day Saints"(末日聖徒イエス・キリスト教会)の頭に"Fundamentalist"をつけたもの。彼らはモルモン教の主流派が多妻婚を1890年に廃止したさい袂を分かった。
FLDSは約10000の信徒を持つアメリカ最大の多妻婚を奉じる宗教集団で、ユタ・テキサス・アリゾナ・カナダなどにコミューンを持つ。FLDSには男性は最低3人の妻を持たねば天国に行けないという教義があり、それが今回の追放の原因となったと考えられている。現在の指導者は49歳のウォーレン・ジェフスで、40人の妻と56人の子どもがいると推定されている。

先週にユタ州で資産が凍結され、金曜にはアリゾナ州でジェフスに対し逮捕状がだされるなど、FLDSに対する圧力は高まっている。ジェフスの居所ははっきりとはわかっていないが、テキサス州エルドラド近郊にあるFLDS所有の1700エーカーの牧場に籠もっているとみられている。この種のセクト集団を追いつめたときの当然の懸念として、ブランチ・ダヴィディアンやヘブンズ・ゲートのような集団自殺を心配する声もある。

ところで、ガーディアンの記事には「FLDSの信仰箇条は?」の見出しのもとに、上記の多妻婚の教義に加えて以下の項目が挙げられている。黒人はカインの末裔であるから劣っている。アメリカに最初に植民したのはイスラエルの失われた十支族であり、彼らのもとを復活後のキリストが訪れた。しかし、実際にはこのどれもがもともとモルモン教の教義に含まれていた(多分最後のは今も公式教義だと思う)。啓典宗教としては他に類のない特徴として、モルモン教組織の最高指導者である大管長の説教と聖典の記述が矛盾した場合、大管長の発言が優先されるということがある。この柔軟さ(あるいは日和見主義)を活用しつつ、モルモン教は幾多の困難を乗り越えてきた。連邦政府との対立をうけての多妻婚の廃止、公民権運動をうけて黒人に宗教上の資格を認めるなどである。モルモン教については『素顔のモルモン教―アメリカ西部の宗教 その成立と展開』を読むとよい。