『スコーピオン』
いやあ、メチャメチャな映画だった。あらすじはここを参照。以下ネタバレをかなり交えつつ感想。
オープニング・シークエンスの2001年作とは思えないほどチャチなCG、場面移動を夜のハイウェイの高速度撮影で表現する陳腐な感性、女が出ると胸や尻をアップで撮らずにいられない中学生男子的カメラワーク(まあこれは賛否両論だが……)、ああ駄作かなあと冒頭から感じさせるに十分だった。
しかし目的のエルヴィス祭りのシーンはかなり良くできている。まずラメ入りジャンプスーツに身を包んだ悪党5人の絵面からして最高。それにエルヴィスショーの音楽にシンクロさせて、ステージシーンと襲撃シーンを交互に編集し呈示する手際は見事、MTV出身の監督の面目躍如といったところ。*1
だがそれ以降はグダグダ。ケビン・コスナー演じる悪党は何を考えてるかまったくわからない奴で、こういった娯楽映画に不釣り合いなほど残虐。特に後半のホッケーファンの車を奪うシーンは非道すぎる。それに母親の感情をまとも描こうとする気がない(というより行動が矛盾している)のに、母子とカート・ラッセルの交流でストーリーを引っ張ろうってったって無理。そのほか明らかな矛盾(あのガソリンスタンドの女はどこいった?)も多い。*2
なんつうか演出が全般的に酷薄なんだよな。小人のエルヴィスを撃ち殺したり、カジノ襲撃のシーンもわざと残酷に演出してるとしか思えない。その辺りの感情の論理にひどく鈍感なのが透けてみえて、もしかして母親や子供も殺されるんじゃないかとひやひやさせられた。
しかし文句ばっかり言ったにもかかわらず、カート・ラッセルを観てるだけでも満足できるので、見て損だったとはいえない。エンドクレジットのカート・ラッセル as エルヴィス・オンステージも良かった。
ところでクリスチャン・スレイターはなんのために出てきたんだ? 「エルヴィス映画なら俺も!」ってことで出させてもらったのか? 『トゥルー・ロマンス』もエルヴィス映画だし、エルヴィスマニアか……