『炎628』(IMDbのリンク)

友達が『M*A*S*H』観たあと、ネットで感想探したら「コメディーで戦争批判なんてふざけるな」というのをみつけて呆れたという話から「じゃあ・・・」ということで思い出した。もっとも恐ろしい戦争映画と噂の作品。
いつも行ってる家から徒歩3分のレンタルビデオ店で普通に発見。前から観たかったんだが、そこらへんのビデオ屋にあると思ってなかったから探してなかった。明日観るぜ。
観た。
舞台は1943年独ソ戦下のベラルーシ。主人公の少年フリョーリャは戦場跡から銃を掘り出し、パルチザンに加わる──母親や村の老人が止めるのも聞かずに。だが、パルチザンはフリョーリャを子ども扱いし、若い女と一緒にキャンプの留守番にまわす。そこにドイツ軍の空爆と落下傘部隊の急襲。しかたなく女を連れて村に帰った少年を待ち受けていたのは、自らの行動が引き起こした恐ろしい結果だった。──その後紆余曲折あって、別の村に逃げ込んだ少年だが、その村にもナチスの絶滅部隊アインザッツグルッペン*1が迫っていた・・・。
観る前はもうちょいパルチザンの活躍的なものを描いてるのかなと思ってた。あとプロバガンダ的な方向もそれなりにあるのか?(製作1985年)とか考えていたが、もうひたすら地獄絵図。いや、始まりのほうはどことなく不穏な空気を感じさせる演出ながらも上向いた展開。パルチザンが集合して記念撮影したり、合唱したり、少年と美人の若い女の交流があったり。しかし、故郷の村に戻ってから、もう落ちていくばかり。ちょっと中盤緊張感がゆるんだかな?と思ったら、ラスト1時間のアインザッツグルッペンの半ばシステマチックで、半ば野放図な虐殺シーンで度肝を抜かれる。
どこの感想でも書かれているが、無邪気な少年だった主人公の顔に見る見るしわが刻まれていき、最後は老人のようになってしまうのがひどく印象的。あとは音の使い方が上手い。耳鳴りのような遠い轟音で近くの人の声が壁を通したような声になったり、と思うといきなり轟音がやんで音が上がったり、また急に無音になったり。遠くでおこる悲鳴のようなさだかならぬ声。なにより記憶に残るのは、村のシーンのあと聞くことになるおもちゃの笛の力ない音だ。
たしかにもっとも恐ろしい戦争映画という評も納得(戦争映画はたいしてみてないので単なる気分ですが)。でも観たあといろいろなシーンを思い出して鬱になる。夏なのに鳥肌が立つぐらいだ。人には勧められないな。

*1:関係ないけど、ドイツ語は聴き取りやすいなあ。前『レボリューション6』観たときも結構聴き取れたし。英語なんか話者によっては全然聴き取れなかったりするのに・・・。もうドイツ語は頭から抜けちゃったんで、意味はほとんどわかんないが。