5 The Global Industry of Military Services

民間軍事会社の産業構造などのビジネスとしての分析。
産業構造は国家の軍隊と違い、資本集約的ではなく労働集約的。このため参入障壁は比較的低い。兵器などの必要な装備はオンデマンドで購入される。また、PMFの高い給料(軍の2〜10倍)のため、雇用志望者には事欠かない。そして参入障壁が低いので、会社の評判が重要になる。
一般にPMFはヴァーチャル会社として活動する。人材派遣会社のような業態をとり、人員をデータベース化、業務に応じて人員と装備を集める。このように社屋などの固定資産にコストをかける必要がないので、社をどこに置くかについても自由度が高い。顧客との関係を考えて、本部はワシントンやロンドンに置くが、実際に会社が登記されているのはバハマケイマン諸島タックスヘイブンというケースは多い。
また、ヴァーチャル会社として組織されることにより、短期の活動で利益をあげ、状況が悪くなったら素早く会社を畳むことが可能となる。同様に前の会社の人的資産を用いて再び会社を立ち上げることも容易である。
さらに被雇用者の大半を元軍事関係者に限ることにより、PMFは人材育成と選別のコストを省いている。その上、被雇用者の輝かしい前歴は企業イメージのアップに貢献し、前歴で得たコネも有効活用しうる。

民間軍事産業は紛れもなく成長産業といえる。10年以上にわたって右肩上がりの成長を続けていながらいまだ揺籃期にあり、勢いの衰えや市場の飽和の気配はみえない。このため冷戦終結により規模縮小を迫られた兵器産業が軍事業務に投資するという事例もある。契約は1億ドル以上の高額規模にのぼることすらある。主な雇い手は依然として政府とその軍隊ではあるが、多国籍企業や国連、NGOの間でも利用が広がりつつある。また、複雑な安全保障状況に必要となる広範な業務提供を可能とするために、世界規模の合併による業界再編も進行中である。