1 An Era of Corporate Warriors?

 まず章の頭でシエラレオネクロアチアコソボPMFが戦況を左右する働きをした経過を略述。
 公的/私的領域の分割は近代政治思想における主要な論争点の1つだった。この2つの領域を分ける線をどこに引くかは時代によって様々であり、費用やサービスの質などの観点から“アウトソーシング”や、“民営化”をすべきだとする活動も政治思想によってまちまちだった。公共医療、警察、刑務所業務、ゴミ収集、郵便、収税、教育、公益事業(電気・ガス・水道など)はそうした論争の対象にあげられてきた。しかし、こと国防に関しては常に政府が独占すべきであるとの結論がでていた。国防こそが政府の最も本質的な目的であり、政府軍によってこそ最適な実現がなされうると。その結論をもって20世紀には国家による軍事力の独占が進んでいった。
 しかし冷戦後に特に顕著になったPMFの隆盛は国防における政府の独占を揺さぶっている。PMFは会社組織であり、その業務は戦略立案、諜報、リスク評価、作戦支援、訓練、専門技術の提供など多岐に渡っている。冷戦以前には考えられなかった軍事活動の民営化により、国際政治と戦争のルールは変わろうとしている。
 次に数多くの実例を挙げて、民間軍事会社PMF)の拡大と、それが限定された一過性の活動では無いことを確認。その活動は全世界に及んでおり、顧客も「残忍な独裁者、無法者の反乱軍、麻薬カルテル」から「正統な主権国家、尊敬を集める多国籍企業、人道援助を行うNGO」まで多岐に渡っている。その一部はここで列挙した。
(宿題:国民国家の理念と国民軍の関係)