William Gibson "Spook Country"ISBN:0399154302

ギブスン新作出るのか……。New YorkerのBriefly Notedから。


前作の小説と同じく、ギブスンはキャリアの大半を費やしてきた近未来のディストピアを捨て、ディストピア的現在を描いている。このディストピア的現在、つまりポスト9/11のアメリカは、ユビキタスなメディアとあいまいな破滅の脅しの虜になって、「自国の政府に対してストックホルム症候群を発症」した。複雑で、政治的主張の強いプロットには、行方不明の輸送コンテナ、元ロックスター、中国/キューバ人の犯罪一家、国内スパイ活動を強要されるアチバン*1中毒者が関わっている。風変わりなネタとしてはサテライトマッピングWi-Fiを使った公共空間ヴァーチャル・アート、キリル文字ラテン文字に変換したヴォラピュク・テキスト*2iPodの曲に暗号化されたデータ、CIAによる対テロ戦争における海賊の雇用などがある(最後を除けば現実に裏付けがある)。ギブスンのヴィジョンは荒涼さを増してはいるが、日常における不気味なものへのギブスンのまなざしが出来事に超俗的な光輝を加えている。
わけがわからん。『パターン・レコグニション』はポスト9/11ものといいながら、そのへんは意識的にかわしていたが、今回は正面から扱うのかな。SF作家のポスト9/11ものというと、スターリング先生のポスト9/11コミックノベル"The Zenith Angle"を思い出すが……
追記。Washington Postに書評があった。こっちはストーリーがちゃんとわかる。しかし──

These disparate storylines ultimately converge around a single common goal: a mysterious cargo container that is moving, by a circuitous route, toward an unknown destination. The container and its contents comprise what Hitchcock -- whose name is invoked in the novel -- called a MacGuffin: the single, crucial element around which everything in the narrative revolves. (The use of such Hitchcockian devices, which include the high-tech sunglasses in Virtual Light and the mysterious footage in Pattern Recognition, has become a common motif in Gibson's fiction.)
ギブスンの話って全部そうじゃないの……

*1:精神安定剤睡眠薬?)の商標名。

*2:たぶんVolapuk encodingのことか。これはキリル文字が利用できない場合にラテン文字に変換する方法なので、原文にあるような"a Cyrillic-Latin amalgam"ではないと思う。