プーチンの三選はあるか

友人とのあいだでたびたび出る話題にロシアの次期大統領のことがある。独裁者的人物に弱みのある友人はプーチンが三期目も務めると決めてかかっているふしがあるが(「ロシアの新しいツァー! まちきれない!」)、自分はそれはないと思っているし、識者の意見も「ない」ということでだいたい一致しているようだ──少なくともストレートなかたちでは。なんといっても大統領は真の民主主義者(シュピーゲルのインタビュー参照)だし。
それでは、ストレートではないかたちではどうなのか、という点に関してFinantial Timesに面白い記事*1があったので、記事の内容(と自分の妄想)をまとめて箇条書きにしてみた(記事の中心は箇条書きの最後4つあたり)。大統領任期延長にまつわる話がなかなか興味深かった。

  • 大統領にはもうならないよ
    • 首相になるよ
    • ガスプロムの会長?になるよ
    • 統一ロシア(与党)の党首になるよ
    • 強力な権限を持った新しい役職がつくられて、それに就くよ
    • 引退するよ
      • ボノやクリントンと同じ会社に委託して、講演旅行して暮らすよ
  • なんらかのかたちで大統領に留まるよ
    • 権力は一瞬たりとも手放さないよ
      • 憲法を改正して三選をはたすよ
      • 何くわぬ顔で大統領選に出馬するよ
    • 民主的な建前にチャンスを与えるよ
      • 一期おいて2012年の大統領選でカムバックするよ
      • 次の大統領が“健康上の理由”で退いて、代わりにカムバックするよ
      • なんらかの危機が発生してプーチンを希求する声が民衆のあいだで高まり、救国大統領として復帰するよ(人民の意思派)
      • 次期大統領の下で憲法が改正され、大統領の任期が7年に伸び*2、これを口実にして行われる新大統領選で当選するよ

*1:"Moscow abuzz with Putin term talk"

*2:現在ロシアでこういう提案が出ている。

同志グロスマン! (追記あり)

友人のmixiで知った。ワシリー・グロスマンの"A Writer at War"が翻訳されるそうだ。邦訳タイトルは『赤軍記者グロースマン 独ソ戦取材ノート1941-45』*1
グロスマンについては前に書いたエントリを参照

ついでに、最近買った英語の本で「翻訳されないかな……」って本を挙げておく。歴史本ばっかりだが、いま近現代史が面白くてしかたがないのでしょうがない(学生時代は歴史は嫌いだったんだけど)。

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ガスプロム・シティ?

Gomadintime2007-03-04

ロシアの超巨大国営ガス会社ガスプロムが本社をモスクワからサンクト・ペテルブルグに移すという話。
これはプーチン大統領の出身地であるサンクト・ペテルブルグ開発計画の一環で、この計画の名前がガスプロム・シティということらしい。友人にこの話をしたとき勘違いされたが、サンクト・ペテルブルグがガスプロム・シティに改名するわけではない……たぶん。
『シュピーゲル』の記事にデザイン・プランのギャラリーがある。自分はレム・コールハースぐらいしか知らないけど、たぶん全員建築界のスーパースターなんだろう。残念ながら新スターリン様式のデザインはない。
シュピーゲル』の記事は去年の12月の記事で、この中の誰がプロジェクトの指揮をとるか未決定だったが、結局RMJMに決まった。
この開発計画は歴史的建造物の集まったサンクト・ペテルブルグの中心部近辺を予定地としている。例えばガスプロム・シティの中心となる77階建てのビル(約400m)は、ネヴァ川沿いのスモーリヌイ大聖堂の向かいに建てられる予定。そのため、各方面からかなりの反対が寄せられているようだ。エルミタージュの館長が懸念を表明したり、ペテルブルグの建築家組合がボイコットしたり、プロジェクト指揮者を選定するために呼ばれた有名建築家が抗議の辞任をしたり。このあたりはWashington Postの記事に詳しい。

アンナ・ポリトコフスカヤ射殺される


モスクワ──ロシアのプーチン政権によるチェチェン政策を率直に批判してきた女性記者アンナ・ポリトコフスカヤさんが(48)が7日、自宅アパートのエレベーター内で射殺体で発見された。検察当局は、ポリトコフスカヤさんの取材・執筆活動と何らかの関連があると見て捜査を進めている。

現場からは拳銃や弾丸が発見された。また、ロシア通信が警察当局者の発言として伝えたところによると、遺体の2カ所に銃撃された跡があり、うち1カ所は頭部だった。


Her death came on the birthday of President Vladimir Putin and two days after one of her bitterest critics, the pro-Moscow prime minister of Chechnya, Ramzan Kadyrov, the son of the ex-President, had his 30th birthday, prompting speculation her life had been taken as a gift to both men.
New York Timesがかなり突っこんだ報道を行っている。

Mr. Yaroshevsky said that Ms. Politkovskaya had been at work on Saturday finishing an article for the Monday paper about torturers in the government of Ramzan A. Kadyrov, the pro-Kremlin premier of Chechnya. He said the story included evidence and pictures.

In an interview in April with The New York Times, Ms. Politkovskaya said she had evidence of torture in Chechnya by Mr. Kadyrov’s police and other gunmen, including at least one witness who had been tortured by Mr. Kadyrov himself. Mr. Kadyrov has always vigorously denied such allegations.

Mr. Yaroshevsky said there were no immediate theories about who might be behind her killing, and noted that it might be convenient for an enemy of Mr. Kadyrov to kill Ms. Politkovskaya in order to blacken the Chechen premier’s name.

The paper had been expecting her to file the article on Saturday night, he said, and she had apparently been killed after she left her apartment for a trip to a nearby store. The RTR television station reported that investigators believed that she had been followed throughout the day.

また、その記事でモスクワの人権団体Center Demosの議長Tanya Lokshinaが「ポリトコフスカヤはもう長いあいだ危険を冒し続けてきたので、危険など超越しているようにみえたのです」と語っている。同じ気持ちだった人は多いだろう。

シャミル・バサーエフ死亡(BBC)


 ロシア連邦保安局のパトルシェフ長官は10日、チェチェン独立派武装勢力の最大の実力者であるバサエフ野戦司令官を殺害した、とプーチン大統領に報告した。バサエフ氏は約330人が死亡した04年の北オセチア共和国での学校占拠事件など数々の大規模テロを主導したとされており、その死亡は、チェチェン独立派にとって大きな打撃となるとみられる。

 同長官によると、バサエフ氏はチェチェン共和国に隣接するイングーシ共和国で10日未明、ロシア特殊部隊による武装集団への掃討作戦中に死亡した。

バサーエフはロシアには殺されないもんだと自分なんかは思っていたが。なんにせよチェチェン独立派にとって大きな打撃となるかは疑問。というより、チェチェン独立派は大きな打撃を受けるとか受けないとかいうほど実体的な勢力ではすでにない気が……

同志トロツキー!

ジョン・リードの"Ten Days That Shook the World"ISBN:0972042806(邦訳『世界をゆるがした十日間』)についてた写真。これは反則だろ。こんなの見せられたらみんなトロツキストになっちゃうぜ。